□■セネガル■□

◎アフリカ人ダンサーについて

山:今回のプロジェクトは男性だけだからね。ワークショップには女性も来るけど。

コンタクト・インプロ(*注)のとき、よく「日本人にはスキンシップの習慣がないから、コンタクト・インプロは不自然だし苦手だ」という声がありますけど、アフリカではどうですか?

山:男性同士でも……メンバーは男性しかいないから……ふつうに抵抗がないですよ。

―親子とか友達同士だとスキンシップの習慣があると思うけど、異性間ではないですよね?

山:おおー。そういえばないね。

―たとえば手をつないでいるカップルはアフリカにはいませんよね? (*注)

山:いませんね。そういえば、うちのメンバー、みんな彼女がいる感じしないもんな。どうしてるんだろう。村だから風俗とかないしね。ゲイじゃないんだろうけどさぁ。

―アフリカでもダンサーはゲイが多いんですか?

山:いや、逆にゲイじゃないからコンタクトできるんだよ。ゲイだったらできないよ。

―ダンサーの平均年齢はどれぐらいなんですか。

山:20歳後半ですかね。ほとんど30歳に近い。

―ダンサーは仕事を別に持っていて、という形ですか?

山:そうですね。小さい村から来て観光客相手に稼いでいるダンサーもいるし、(所属先が)決まっているダンサーはそこから少しお金をもらっている。イミグレーションで外人の入れ換えがあって、繰り返しちがった国の人がやって来る。

 同じアフリカ大陸内でも他の国で仕事をするのは大変みたい。(ビザの)申請とかが。他の給料を払わなければならないとか、大変らしいですね。
 それと往々にして生活が重要だから、前いたほとんどのダンサーがとんずらしちゃう。突然ヨーロッパに行っちゃうみたいですね。

―ハイチとそっくりですね。

山:そうですか。やっぱりそうですか。

―ハイチは、政情不安定でダンスやる人はお金持ちの子どもぐらいなんですが、ディレクターが「これだ」という子を見つけると、小さいころからお金を出してパトロンになって育てるらしいんですよ。

:それはいいダンサーになるね。

―なるんですけれど、むこうは政情が不安定なので、政権が代わると一夜にしてごろっと力関係が変わって、金持ちが一気に没落することがあるらしいんですよ。そうするとその一家がある日突然、アメリカやヨーロッパに行ってしまって、急にその子がいなくなっちゃうこともあるらしいですね。

山:セネガルは結構、安定しているんですよね。コンゴから職を求めてきている人もいましたね。

 単純に言って観光が外貨を得る主流ですから、ダンスする側は、下の層は「観光のために踊りをやっているんだ」という傾向が往々にしてあるような気がします。それで生計を立てていて。(僕は)そこからもっと展開するようなコンテンポラリー(なダンス)をやりたい。

 逆に、上の層の人たちで両親から「ダンスはお金にならないからやめなさい」といわれているんですけれども、純粋に「自分は踊りをやりたい」っていう、「オーディション受けて入りたい」という人もいるし。でも上手くなかったりするんですが。

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注:コンタクト・インプロ(Contact Improvisation)
複数名のダンサーが他人またはモノ(壁など身の回りのものも含む)と密着した状態(コンタクト)を保ちながら行う即興のダンス。

*注:手をつないでいるカップルはアフリカにはいませんよね?
西〜中央アフリカ一帯には、<人前で男女が身体を触れ合わせるのは猥褻だ>という価値観がある。したがってアフリカには、男女がペアになるダンスはほとんどない。ごくわずかな例外にしても、社交ダンスのように男女が寄り添うことはありえない。男女ともエロチックな動作をすることはあっても、決して相手の身体に触らない。
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◎観客

―むこうお客さんの反応ってどうですか? かなりダイレクトですか?

山:すごいです。異常です。どんな面白くないカンパニーでも、反応がうわーとあるんですよ。

 ただ、フライヤーがないんですよ、むこうは。ポスターだけで、事務所の電話番号さえも載っていない。それでよく人がやって来るな、と思います。お金は取ったかもしれません。

―騒ぐというのは、舞台見て騒ぐということと、舞台とは無関係に騒ぐという二種類があるのではないかと。

山:そうね。例えば、ニューヨークだとちゃんと見ていて騒ぐ。見ているときは……あー、でも一緒かなぁ。

―独特のノリがありますよね。

山:ノリがやっぱり違いますよね。ニューヨークだと結構、黒人社会と白人社会が分かれていて、黒人がやるパフォーマンスは黒人だらけで、それで結構さわぐというノリがありますよね。アメリカはまだそういう意味で結構差別があります。

―セネガルでは、舞台芸術系ダンスを見に来るのはどのような人たちですか?

山:うんとね。ジャンメイ自身がお嬢さん育ちなんです。で、むこうの偉い人、どちらかというとアフリカの中でもハイソサエティの人たちが来ます。その辺のヒエラルキーの学生とか、お金のある人が見に来ているように思いますね。

 どういうふうに情報を入手して公演にやってくるのか分からないけれども、割と下の層の人たちも来ます。例えばフィリピンだと、社会のヒエラルキーがずっとはっきりしてるじゃないですか。(だからハイ・ソサエティーの人しか来ませんよね。)

 一方、(普段稽古に使っている)そのスタジオというか学校(の体育館)がある村というのは、昔、そこの港から最も多く奴隷が売られていった歴史的な場所なんですね。本当に海が近いですから、絶えず風が吹いて砂漠っぽいところもありますね。結構、別荘地としても良いかも。フランスから来て別荘持ってる人もいますよ。……自分がこうして(ダンスのために来ているのが)ねぇ……。

―ずっーと海風が吹いているってことは……セネガルは山がないんですよね? ずーっ遮るものがないので、何十キロも先まで風が吹き抜けていく。

山:ああそうね。

 (スタジオがある村では)村中でコミュニケーションが取れている。村自体が(プロジェクトを)立ち上げている雰囲気だし。今そこの学校をつくっている建築家がイタリア人なんですが、そのイタリア人が、村中の人を集めてマラソン大会やったりとか、いい感じのコミュニケーションがありますね。

◎セネガル

山:村でふだん(ダンスの)活動してるんで、あんまりダカールという都市の仕組みも分からない。……ダカールは怖い。治安が悪そう。

(村の様子は)フィリピンよりもひどくない気がするけど。フィリピンだと、スラム街のごみすて山(スモーキーマウンテン)に住んでいる子どもたちもいますから。

 村は全く電気がないから夜は怖いですよ。(夜になると)村は元気ない。あと犬が野生化していて、どんどん子供産んじゃって近親相姦もあるので、犬の顔が似てて怖いですね。以前インドに行って……インドはアフリカとは全く違いますけど……インドはすっごく暑い国ですが土地は豊かですね、穀物があって。でもアフリカはまったく土地が肥えていない。で……インドにはいろいろな街がありますけど、カルカッタは西洋人が占領した町で、夜、いっぱいインド人の貧民が平気で道路で寝ているわけです。で道路で野糞していて、それもかっこいいなぁとも思ったけど、すごく西洋が置いていったものを自分たちの生活場所として、彼らなりにオリジナルなものにしているのは、すごい格好いいなぁと思うんですが……。アフリカの場合はそうではなくて、確かにダカールも、街はビルとかあるけど、雰囲気はあるけどちょっとそういう部分もあるかな……。

 確かに土地は厳しいな、と感じますね。セネガルであれば、(『アフリカの夜の』)ポスターに移っている地面の上の黒い塊は、全部牛の糞ですよ。(写真参照→)あの辺は土地が耕されているという印象はないですね。中央アフリカに行ったら、相当いいんでしょうね。ナイジェリアとかケニアとか行ったら、あの辺は。

―むこうに行ったときに、村のお祭りは御覧になりましたか?

山:村の祭りは一回だけ。(祭り自体は)結構頻繁にやっていて、鬼みたいなのが出てきて子どもに「うわー」とやってたりする。でもあんまり見てない。一回通りかかったときちょうど祭りをやってて、僕ははじめてだし怖いから遠目から見て。

 貧乏だから暇を持て余してることもあって、村に子どもは多いね。みんなかわいい。ピュアだし。妬みとかあんまりないしね。

―村社会じゃないですか。日本も村社会だから、身内の悪口言って足引っ張りあっているとか、そういう面持ってますけど、むこうはどうですか?

山:あまりないですね。(でも)オーディションに落ちたとき、「自分はやっぱりダメなんだ。無鉄砲、向いてないんだなぁ」っていう、そういった時に妬んだりする。自分に対して悲しい。競争が内部であるから。で、脱退とか。

―変な話になるんですが、この間のワールドカップでアフリカ・チームのまじないの話が話題になりました。日本でも中学生の頃は、試合とか試験の前に人の字を手のひらに三回書いて呑んだり、お守りを持つとかいろいろありますよね。むこうにもそういう風習があるんですか?

山:ああ、ありますね。むこうはバオバブの木をすごく尊重しているんですよ。<木が私に先祖を伝えている>と思っているくらいに、それはイスラムの信仰ではなくて、原始宗教的なものが絶対的にあって、絶えず水とか先祖に対して畏敬の念をもっていて。埋葬方法はわかりませんが、木の根本に死んだ人を埋めるぐらいに、すべて<木たちが私を守っている>ということがセネガルにはある。

 バオバブの木は上が根っこで、根っこに葉っぱがあって、逆に下に花が咲いているというイメージを現地の人は持っているらしいんですよ。わざわざ遠回りしてバオバブの木へ行って、木の前で全員が輪になってなにか唱えて。すると「ここでちょっと(即興で)ダンスをしましょうか」っていうリアクションがあって……これ(木の前のダンス)は絶対週に一回ぐらいやりますね。すると普段出ないステップが出たり。

 お祭りのことは分かりませんし、まじないのことも分かりません。僕が接したのは木に対する信仰ですね。

―ハイチでは、子どもが生まれたらへその緒を埋めて、そこに木の種を埋める習慣があるんですね。オレンジとか実がなる木を植えるらしいんですけれど、十歳を過ぎた頃になると立派な木になっていて「取れた実はみんな、おまえのものだから食べて良いよ」と、いうことになるらしいですよ。で、もし木が枯れてしまった場合「将来お前は大変なことになるから」とまじない師を呼んでお払いをやるらしいですね。

 むこうは確か80パーセント、イスラム教徒だそうですが、一日五回お祈りがありますよね。稽古はお祈りの時間とかぶらないようになっているんですか?

:えーとね。人によって違いますね。まちまち。頭つけてお祈りしている人もいれば、「全く関係ないよ、酒飲んじゃえ」なんて人もいます。うちのカンパニーではないですけどね。でもその時間は考慮しているみたいですよ。

 で、五時になるとコーランが流れますね。……インドネシアもそうでしたね。インドネシアのほうが(まじめに)信じている人が多かったですね。

―むこうにいて日本人に対する反応はどうですか?

山:人なつっこいところがあるから、あまりさみしい思いはしないですね。逆にうるさいぞ、一人にさせろよ、ってね。でも抵抗はないみたいですよ。

―田舎だから、というのもあるんでしょうね。

山:ええ。あと「日本人だから」という独特の違う部分もあるから、興味も持っている、っていう。

 ただね、食事はおいしくて。チェブゼンとか、ハイビスカスのジュースはおいしいですね。つまみは全部ピーナッツで。ピーナツの栽培、むこうは盛んですよね。実が引き締まっているので、おいしいんですよ。取れたてかもしれないですね。お菓子とかはないんですよ。

 一番最初に行ったとき(教わったんですが)、沸かしたお湯を飲むのに木の枝でかき回すと飲みやすくなるんですよ。生で飲むと下痢するんで。下痢になればいいんですけど、ならないと太っちゃって(笑)。下痢になるか太るかどっちかですね。

参考URL:
   http://www.dancecenter.org/site/press/07022003.htm
   http://culturalevents.ucr.edu/season/Jantbi.html
   http://www.artsinternational.org/projects/africa_project/
   http://groups.yahoo.com/group/EcunewsAlerts/message/279
   
2003年7月18日、東京・中目黒のフレッシュネス・バーガーにて取材

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