■小さな大都市のフェスティバル
高松平蔵<ジャーナリスト>
ドイツ南部の地方都市エアランゲンは人口11万人。筆者はこの小さな街に住んでいるが、劇場があり、フェスティバルがあり、文化的に充実しているあたりが気に入っている。
たとえば、7月9日から13日にかけておこなわれたダンス・パフォーマンスのフェスティバル「ARENA 02」が行われた。同フェスティバルはそもそも地元の大学でカルチャーマネジメントを学ぶ学生たちが中心にはじめたもの。今回で12回目を数える。オープニングでは市長のスピーチがあるなど、街にとってもすっかり年中行事になっている。
中身はなかなかの盛りだくさんだ。毎年国際色豊かで、今年もブラジル、オーストラリア、ポーランド、イングランド、オーストリアといった国からアーティストきた。
また、公演はもちろん、その後にアーティストを交えて話す「アフタートーク」がおこなわれるほか、期間中は仮設のカフェが設営される。オープニング・エンディングのパーティも盛り上がる。さらには公演の批評を掲載した媒体が毎日発行される。
さて、このフェスティバル、エアランゲン市の中でどういった役割を担っているのだろうか。
まずは実地訓練といったものだろう。フェスティバルを運営していくには、市営の劇場のスタッフや外部の人々の技術や智恵、ネットワークが必要だ。また、フェスティバルは地元の銀行や企業からの支援で成り立っている。運営メンバーの学生は当然、こういった企業とも接点が出てくる。
加えて、市内の建物や場所をつかったパフォーマンスも毎年行う。これもアレンジは大変そうだ。今年はビール祭りが行われる丘にあるケラー、つまりビールを貯蔵しておく人工の洞窟でオーストラリアとドイツの共同製作によるパフォーマンスが行われた。長時間かけて作りこまれた作品で、完成度の高いものだった。
メンバーの学生は毎年、新しく入れ替わる。そのため、運営面で「素人やなあ」というところがあるのだが、そこはお愛嬌。いずれにせよ、こうした規模のフェスティバルを運営するわけだから、学生側から見れば、カルチャーマネジメント実践の最高の現場といえそうだ。
さらに注目すべきは、市営劇場や市の文化セクションで「元・ARENA」が活躍していることだろう。長期的にみると、人材輩出の仕組としても一役買っているかたちだ。
こうしてみると大学での理論、ARENAでの実践、これらを通して文化の人材のネットワークと新陳代謝ができていく流れがおこっていることがわかる。地元の文学作家ハビブ・ベクタス氏はエアランゲンについて「小都市だが、大都市でもある」という言い方をしているが、都市の質とは何かを考えさせられるフェスティバルである。
(了)
協力組織などの名前を書かれた箱を組み立てて「ARENA」の文字。謝意を示す エキシビジョン。(オープニングセレモニーにて) P.A.N.通信 Vol.41掲載