■新しい舞台芸術文化を育むためには、小規模劇場への支援が必要である
杉山準<演劇プロデューサー>
先日「アトリエ劇研ダンスセレクション」という自主事業を無事終了することができた。コンテンポラリーダンスの選りすぐりを上演するこの企画も今回で3回目となり、おかげさまで毎回好評をいただいている。今回も計7ステージをほぼ満席で終えることができた。普通にいえば大成功。ということだが、主催したアトリエ劇研は大赤字。肩で息をしながらやっとの思いで乗り切った。満席と言っても350人足らず。この人数を聞くと「それしか入らないの?」と思われるに違いないが、こうした作品ではこの人数を集めるのにもひと苦労なのである。50席の劇場だから、400席の劇場の8分の1の経費で済めばいいが、人を拘束するのにかかる経費は劇場の大小にあまり関係ない。つまり、チケットの価格を座席数に反比例して高くしない限り、小規模になればなるほど収益率は悪くなり、運営は苦しくなってしまうのだ。これは、小劇場を借りて上演する場合でも同様である。
評価が定まっていない若手の表現や、実験性・趣向性の強い表現、また難解な作品などは、愛好者も少なく観客動員にも限りがある。そのような作品をいきなり大きな劇場で上演しても、お客さんは入らないし、経費は高くつくし、制限は多いし、ステージ数は減ってしまうしということで、公演するリスクは高い。上演してこそ舞台芸術であるのに、それがままならないということは活動の停滞を意味し、新しい表現や革新的な試みを断念させかねない。つまり小劇場は新しいことや、変わったこと、未熟なものを含めた多様なものを受け入れ、適性規模での発表機会を保証できる場として必要なのである。そして、そんな多様性の中からこそ新たな才能や新たな観客が育つのである。
欧米のように企業や公的機関よる小劇場支援が、我が国でももっと行われてしかるべきだと思う理由の一つはこういうことである。P.A.N.通信 Vol.57 掲載