■ヌーボーシルク見聞録 vol.2

 小原啓渡<アートコンプレックス1928 プロデューサー>

 シルク・ド・ソレイユの「サルティンバンコ」大阪公演が6月21日から9月9日
まで上演されている。先だって東京公演を観たが、新しいサーカスにあまり
馴染のない方には是非ともお勧めしたい。
基本的にはサーカス芸のオムニバスではあるが、舞台セット・音楽・照明・
衣装、あるいは構成、転換時の演出など、伝統的なサーカスには見られない
斬新さとクオリティーの高さを楽しむことができる。
 シルク・ド・ソレイユは世界的に成功をおさめている大型カンパニーだが、
その成功の要因には、単なる見せ物ではない、観客の知的欲求を満たして
くれる芸術性とファッショナブルな要素が演出面に溢れているという事が
挙げられる。そして何より骨幹となっているサーカス芸、言い換えれば
「人間の身体能力の極限を表現するパフォーマンス」には老若男女の枠を
越えて、人々に純粋な驚きと感動を呼び起こす大きな力があるという事も
大きいだろう。
 彼等は一つの芸を身につけ、発展させていくために、長い年月に渡る
日常的なきびしい鍛練を続けている。これは人を魅了する作品を創るための
重要なベースである。
もちろん、パフォーマンスにおいてテクニックのみが重要視されるものではない
としても、少なくとも精神面あるいは感覚的な面における鍛練を怠らないという
事は、舞台に乗る人間にとって不可欠の条件ではなかろうか。
 消耗品のごとく、安易に作られては捨てられていく作品が多いように思われる
昨今、きびしい鍛練の末に完成された、鑑賞に耐え得る身体表現の一つとして、
舞台に関わる人々にも是非観て頂きたい公演である。

P.A.N.通信 Vol.34掲載