
ゲスト: 佐東 範一 (アートアドミニストレーター)
聞き手: 小原 啓渡
佐東 範一(さとうのりかず) プロフィール
1960年北海道生まれ。
1980年舞踏グループ「白虎社」の創立に参加。
以後1994年の解散までの国内公演、海外ツアーにて舞踏手兼制作者として
活動。
1996年セゾン文化財団とアジアン・カルチュラル・カウンシルの助成を受け、
アメリカ・ニューヨーク、ダンス・シアター・ワークショップにて1年間の
アートマネージメント研修。1997年アメリカ・インドネシア・日本の3カ国
による国際プロジェクト「トライアングル・アーツ・プログラム」に
アーツアドミニストレーターとして参加。
1998年京都にてJapan Contemporary Dance Network設立準備室、
制作事務所GroovismCompanyを設立。
JCDN URL http://www.uniteddigital.com/~jcdn/「創造とは何か」をテーマに様々なジャンルで活躍されている
アーティストや創造に関わるお仕事をされている方々にお話を
伺っています。今回は、ダンスを中心としてパフォーミング
アーツに関わるネットワーク創りに向けて始動している
佐東範一さんにお話を伺いました。小 原
佐東さんは、元ダンサーで、現在は制作の仕事をされていていますが、
「創造」に関してどういったお考えをお持ちでしょうか?佐 東
僕の場合は制作者という立場で、『創造』について話したいと思うのですが、
まず初め白虎社時代は、制作という立場とダンサーという立場とを両方
ずっと一緒にやっていました。舞台に立つ人間と制作する人間とは全く
視点が違うと考えていたので、ジレンマもおもしろさもありました。
舞台に立つということは、舞踏の場合であれば、どんどん自分の中に
入っていく、掘り下げていくことと同時に外の視点も持ち、どこまで
集中力を高めていくかということになります。
しかし制作者としては、全体をどうみるか、いかに常に目を360°広げて
もっていけるか、というような視点になるのですが、ダンサーと制作者とを
兼ねていたので、その2つともを持っていなければいけないということを
常に感じていました。その切り替えをするわけですが、開演前までいくら
制作とか打合せとかをしていても、舞台に立つ前には、例えば白塗りと
いうことを通して、それをしたならば、自分が変わるんだ、
というような思い込みでやっていましたね。小 原
最終的にダンサーではなく制作者としての活動を選ばれたのは何故ですか?佐 東
人と一緒にゼロの地点からものを創っていく、ということが僕にとっては
面白かったんです。たとえば以前に、和歌山の勝浦で野外公演を企画した
ときに、普段は全然舞台なんかと関係のない消防士の人や魚屋さんや
呉服屋さん達と、あーでもないこーでもないと毎日夜中まで話しながら、
結局誰も考えていなかったようなすごい野外舞台が出来上がったんです。
その時に自分が舞台に立つということよりも、その一緒に舞台を作った
人たちと同じ目線で、舞台を見ていたいなーと思ったのがきっかけだった
ような気がします。
舞台に立つ人間、アーティストとしてものを創る人間と、制作者は、
立場は違うけど同じだと思っています。両方がないと、ひとつのもの、
場が成り立ちません。そういう意味では制作者は別の角度からみた、
創造者である、と捉えています。僕は今、アートアドミニストレーター
という肩書きを付けていて、その意味は社会と芸術をつなぐ立場という
ことですが、それには創造性がなければ無理で、例えばノウハウがあって
事務的にこなせるというような仕事ではありません。
あるアートマネージメントのセミナーで、「アートマネージメントには、
レシピがない」という人がいて、なるほどと思いました。
場所が違えばやり方も変わってくるし、そこにいる人によっても変わっ
てくる、同じ条件などはひとつもありません。だから常に自分なりの
レシピ=方法論を創造し、具体化していくしかないですよね。
ある新しい価値観を創り出す役割として、制作という今の仕事が
あると自分では思っています。
それが、自分にとってのおもしろさですね。小 原
佐東さんにとっての創造は、人との出会いも含めた、偶然とかハプニングが
作用することなのでしょうか?佐 東
化学反応みたいなもので、ある素材にある作用を施すことで、
それが全く違う物質に変化することがありまよね。
JCDNの活動で全国を回っていますが、アーティストや劇場がこうあって
欲しいということよりも、今迄これとこれは出会わなかったけれども、
出会うことが出来たならば何かここに生まれるだろう、と自分の中では
ある確信があります。小 原
「化学反応」という表現が印象的でしたが、例えばコラボレーションでも
そうですが、単に結び付けただけでは全然面白く無い、結局面白いものは
そこに化学反応が起こったものだけなんですね。佐 東
くっつけるだけでは何も生まれなくて、そこに塩なりコショウなりという
あるスパイスの作用になりたいというのが、今のJCDNや僕の希望的役割です。
ただ単に紹介しあうだけではなくて、そこに何かの視点が入ることによって
大きく変わることがあり得ると思っています。
逆にいえば、そうでなければ、自分達のような役割はあまり必要では
ありませんね。以前はイベンターと呼ばれる人たちがいて、
いろんなものをただ並べれば何かが成立したように見えるということが
ありましたが、それは今の時代はもう、終わったかな、と感じています。
これからはダンスなり舞台芸術というものが、日常生活に密接した形で、
社会の中の重要な要素に成るべきだし、今の子供たちの事件を見聞き
していると、それを求められているように思います。
その為に、アーティストと制作者が共に考え、新しい価値観を作って
いけたらと考えています。小 原
制作者という立場における「創造」という興味深いお話を聞くことが
できました。何もないところからものを創り、更にそれを形として
成り立たせる、という大変なお仕事だと思いますが、JCDNの今後の活躍に
期待しています。
ありがとうございました。P.A.N.通信 Vol.31 掲載