ゲスト: スーザン・バージ

 聞き手: 小原 ケイト

スーザン・バージ プロフィール

コレオグラフアー。
1940年アメリカ生まれ。
大学でコンテンポラリー・ダンスに出会う。
アルビンニコライに師事。
ニューヨークでフィリップグラスの音楽を使った
「テレヴァニラ」を創作し、その中で自身のソロダンスに
ビデオと映画を組み込む。
1970年に渡仏後、コンテンポラリー・ダンスを教授し
1975年に自身のグループを結成する。
1989年、フランス文化奨学金を得て
エチオピア、シリア、ギリシャ、日本、台湾、インドを旅する。
1981年から1986年の間、
エレクサン=プロヴァンス現代ダンスフェスティバルの
アートディレクターを務める。
1992年から1993年には京都の関西日仏交流会館に滞在。
1993年に京都で『間と間の間』を創造。独自の空間センスをもって
日本という異文化に向かい、伝統音楽である雅楽にあわせた
現代の儀式を生みだす。
この試みは1994年の「金色の風の彼方」、
1996年の「うぶすな」につながっている。

すべてのアーチストにとってクリエイトするというコンセプトは、
非常にベーシックで個人的な作業であると思われます。
しかし、個人的であるその根本的な部分で、何か共通する
創造の概念が存在する気がします。
“創造の真理”と言えば少し大げさな感じがしますが、
このひとつのテーマに沿ってさまざまなアーチストの方々に
お話をうかがっています。前回はジョセフ・ナジさん。
今回は、フランス在住のアメリカ人振付家、
スーザン・バージさんにお話を伺いました。

 
ケイト
あなたが作品を作りあげてゆく上での、
具体的な方法論のようなものがあれば、うかがいたいのですが。

スーザン
そうですねぇ。私が作品にのぞむ時、やはり自分の人生の中で得た
様々な経験的要素や、概念、あるいはその時点における興味の対象等を
ベースにして、何か新しい形を模索するところからはじめます。
自分の中にある、それらの素材、一つ一つを再確認し、検証して、
それらによってどういう種類の空間を創り出すことができるのか、
これらのコンビネーションの可能性を考えます。
私の場合、そのコンビネーションを見つけだす最終作業において、
ダイスを使うんです。
すべての情報を収集、整理した上で最終的にダイスをふることによって、
それらの中にあるコンビネーションの法則を見つけだします。
例えば、作品の構成であるとか、シーンにおけるダンサーの数などです。

ケイト
なるほど。それでは、いつ、どういった条件のもとで
ダイスを振られるのかもう少し具体的なお話をうかがえますか?

スーザン
そうですねぇ。私はいつも深夜、静かな空間で集中してダイスをふります。
一つの空間に対して、ダイスは確実に一つの答えを提示してくれます。
とても明快です。誰がダイスを通して答えをくれるのか、
私にはわかりませんが・・・。(笑)
このプロセスは常に、みちびき出され得る法則の全ての可能性を
ひめています。これは、ある意味で、現実以上に大きく豊かな
可能性を含んでいると言えます。
そして、あらゆる可能性の中のたった一つの答えだけが
提示されるわけです。もちろん、この作業において大切なことは
その夜、その瞬間、ただ一度きりのもので、その一度きりの結果に
疑いを持たないことです。これを崩すと、
私は、狂わざるを得ませんから・・。(笑)

ケイト
ということは、最終的な決定をあなたは、自分自身の力では出さない
ということでしょうか?

スーザン
確かにそうかもしれませんね。私にとって、重要なのは
このプロセスによって提示されたたった一つの法則をどう解読し、
どう理解するかということなんです。
例えば、作品の全体的な構成を決定する場合、
自然の大きな流れと自分自身がつながるために月の満ち欠けや、
暦の上での季節の変わる特別な日などを基準にしてダイスを振ります。
その日までに私は、莫大な量の関連する文献や作品のテーマに関する
資料を集め、整理し、何度も読み研究しノートに書きまとめます。
そして、全ての情報をどう扱うかをひたすら考えるんです。
そして、それら全て事前の準備をやりつくしたうえでダイスをふり、
ダンサーと共に振付け作業に入っていきます。
ダンサーと初めてリハーサルを始める前夜はぐっすり眠ります。
これは重要です。(笑)
次の日、どういう動きを振り付けるのか、ダンサーが
どういうふうに見えるのか等、具体的なことは何も考えずに
スタジオに入ります。
その後は、全ての情報や、アイディアやイメージが自然に
自分の心を通して動きになり、体を通して出現したその動きを
ダンサーに伝えてゆく。とても言葉では表現できない瞬間です。

ケイト
今、あなたのお話をうかがっていて、
私の中に思い浮かんだ言葉があります。
「天才とは99%の努力と1%のインスピレーションである」という
エジソンの言葉ですが、あなたにとってインスピレーションが
ダイスと言えるのではないでしょうか?

スーザン
なるほど、そうかもしれませんね。
ただ、私の考えるインスピレーション(直観)と言うのは
動物的な本能と文化や教育や歴史などから培われた知性との
出あいが一つのラインの上で二次元的に出会いその瞬間に
三次元あるいは未知の世界にワープして行く、
そういったものだと思います。

ケイト
なるほど、それでは最後に、全てのアーチストにとって大切なものは
何だとお考えですか?

スーザン
その人の人生を生きることだと思います。
つまり、やらねばならない時に、やらねばならないと感じることを
やることです。そしてそれをやる勇気を持つことです。
この瞬間、あなたが行かねばならないと思う道に勇気をもって
歩きだすことです。
おそらく、自分自身、なぜそうしなければならないのかその瞬間は
わからないかも知れませんが・・・。(笑)

ケイト
今日は本当にありがとうございました。

P.A.N.通信 Vol.09 掲載